いかに悪い結果につながったとされる事例でも、それがはじめられた当時にまで遡れば、善き意志から発していたのであった
ディオクレティアヌスとコンスタンティヌスの二人の皇帝によって、ローマ帝国は再生したとする研究者は多い。だがこの二人は、ローマ帝国をまったく別の帝国に変えることによって、ローマ帝国を起たせておくことには成功したのである。
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しかし、帝国をひとまずにしても起たせておけた歳月は、百年足らずにすぎないのである。それもその百年が、五賢帝時代の百年のような百年であるならば、多大な代償を払う価値はあったかもしれない。
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だが、これ以後の百年は、そのようにはならなかった。「パクス・ロマーナ」は、再びもどってはこなかったのである。ゆえに、「これほどまでして、ローマ帝国は生き延びねばならなかったのか」とは、ローマの誕生から死までの歴史を学び知る人の多くの胸中に、自然にわきあがってくる思いでもあるのである。