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「ローマ人の物語 - 最後の努力」(上・中・下巻)はローマ世界が中世へと変貌する半世紀のお話。

塩野七生 / ローマ人の物語(35) - 最後の努力(上)

塩野七生 / ローマ人の物語(36) - 最後の努力(中)

塩野七生 / ローマ人の物語(37) - 最後の努力(下)


四頭政で外敵の危機はなんとかなるも対立発生で内政の危機。そして再統一されるも、そこには今までのローマ皇帝とは違う絶対君主。並行してキリスト教の許容と振興。
分割もキリスト教もローマが生き残るための方策のひとつだったのだが、当初の意図とはずれていく。

上巻の冒頭に引用されているユリウス・カエサルの言葉が象徴的だ。
いかに悪い結果につながったとされる事例でも、それがはじめられた当時にまで遡れば、善き意志から発していたのであった

あと下巻の最後のまとめより(p.136)。
ディオクレティアヌスコンスタンティヌスの二人の皇帝によって、ローマ帝国は再生したとする研究者は多い。だがこの二人は、ローマ帝国をまったく別の帝国に変えることによって、ローマ帝国を起たせておくことには成功したのである。
[...]
しかし、帝国をひとまずにしても起たせておけた歳月は、百年足らずにすぎないのである。それもその百年が、五賢帝時代の百年のような百年であるならば、多大な代償を払う価値はあったかもしれない。
[...]
だが、これ以後の百年は、そのようにはならなかった。「パクス・ロマーナ」は、再びもどってはこなかったのである。ゆえに、「これほどまでして、ローマ帝国は生き延びねばならなかったのか」とは、ローマの誕生から死までの歴史を学び知る人の多くの胸中に、自然にわきあがってくる思いでもあるのである。


■新潮文庫版「ローマ人の物語」一覧
(1) ローマは一日にして成らず(上) [2002-05-31-1]
(2) ローマは一日にして成らず(下)
(3) ハンニバル戦記(上) [2002-08-01-3]
(4) ハンニバル戦記(中)
(5) ハンニバル戦記(下)
(6) 勝者の混迷(上) [2002-09-30-4]
(7) 勝者の混迷(下)
(8) ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) [2004-09-03-1]
(9) ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)
(10) ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)
(11) ユリウス・カエサル ルビコン以後(上) [2004-10-05-5]
(12) ユリウス・カエサル ルビコン以後(中) [2004-10-07-4]
(13) ユリウス・カエサル ルビコン以後(下) [2004-10-08-3]
(14) パクス・ロマーナ(上) [2004-11-28-4]
(15) パクス・ロマーナ(中)
(16) パクス・ロマーナ(下)
(17) 悪名高き皇帝たち(一) [2005-09-11-2]
(18) 悪名高き皇帝たち(ニ)
(19) 悪名高き皇帝たち(三)
(20) 悪名高き皇帝たち(四)
(21) 危機と克服(上) [2005-12-07-4]
(22) 危機と克服(中)
(23) 危機と克服(下)
(24) 賢帝の世紀(上) [2006-09-07-2]
(25) 賢帝の世紀(中) [2006-09-09-3]
(26) 賢帝の世紀(下) [2006-09-10-2]
(27) すべての道はローマに通ず(上) [2006-11-13-2]
(28) すべての道はローマに通ず(下)
(29) 終わりの始まり(上) [2007-08-29-4]
(30) 終わりの始まり(中)
(31) 終わりの始まり(下)
(32) 迷走する帝国(上) [2008-09-08-2]
(33) 迷走する帝国(中) [2008-09-13-2]
(34) 迷走する帝国(下) [2008-09-17-1]
(35) 最後の努力(上) [2010-02-06-3]
(36) 最後の努力(中)
(37) 最後の努力(下)