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死の壁

2006-11-04-2 [BookReview]
養老孟司 / 死の壁


バカの壁[2005-07-28-4]よりもこちらの方が良いですね。
「死」の方が「バカ」よりも、納得しやすいテーマだからかも。
6年前[2000-06-26-2]に聞いた養老孟司氏の講演では、いつから死か、死体は人間か、といった死にまつわる話が印象深かったのですが、それまわりの話がこの本でカバーされてました。

以下、読書メモ:

死体と便。
 便をなくすことが出来ないのと同様に、死体を消すことは出来ないのです。
 となると、「死だの死体だのは見たくもないし、考えたくもない」という姿勢は、当たり前のことを見ようとしていないということに他ならないのです。死体が気持ち悪い、というのは当然の常識だと思うかもしれません。でもそれは都会の常識に過ぎないかもしれないでしょう。(p.44)

死の境界。
亡くなったあとのお爺ちゃん、お婆ちゃんのヒゲや髪の毛が伸びたというのはよく聞く話でしょう。[...]こう考えれば、「生死の境目」「死の瞬間」が厳格に存在しているというのは勝手な思い込みに過ぎないことがわかるはずです。法律上の定義が、死の全貌を示しているとどこかで思い込んだから生じた誤解に過ぎません。人が本当にどの時点で死んだのかというのは実は決定できない。(p.58)

死について考えても無駄。
 死というのは勝手に訪れてくるのであって、自分がどうこうするようなものではない、それを考えるのは猿知恵で良くないと思っているのです。きっときちんと考える人もいるのでしょう。しかし私はそうではない。だから自分の死に方については私は考えないのです。
 無駄だからです。 (p.168)

昔の骨。
通常の関東ローム層の酸性土壌だから、骨が溶けてしまう。[...]旧石器の石器は出るけど人骨は出ない。人骨は消えてしまう。(p.43)
へえ。なるなる。

「バカの壁」について、
そもそも本に書いてあることを全部絶対正しいなんて思わないでくれと常々言っているのですが、真面目な人はそれだけで怒るようです。(p.11)
ベストセラーになっちゃうと、あまり本を読まない人も読んだりして、そういう人も多くなるかもねえ。

反権力と反体制。
反権力を声高に言ってる者は、つまり俺に権力をよこせと言っているに過ぎない。決して体制そのものに異を唱えているわけではない。反権力と反体制は別ものです。(p.126)

口(くち)には実体がない。実際に解剖学用語からは削られてるとのこと。
少し考えればおわかりいただけるはずです。たとえば唇は存在しています。
それを指せばそこにあります。舌も存在しています。でも唇でも舌でもない「口」はどこにあるのか。それは穴でしかない。実体がないのです。
(p.166)
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