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小確幸とは、
人生における小さくはあるが確固とした幸せのひとつ
であり、村上春樹(文)・安西水丸(絵)による書籍(エッセイ集)『ランゲルハンス島の午後』の第19章「小確幸」で登場した表現です。

このエッセイでは「小確幸」の具体的な説明としてパンツとTシャツの例が挙げられています:
引出しの中にきちんと折ってくるくる丸められた綺麗なパンツが沢山詰まっているというのは人生における小さくはあるが確固とした幸せのひとつ(略して小確幸)ではないかと思う(...)
下着のTシャツというのもかなり好きである。おろしたてのコットンの匂いのする白いTシャツを頭からかぶるときのあの気持もやはり小確幸のひとつである。

この、小確幸という言葉、私はとても好きです。
人生における幸福について考えるときには必須な要素だと思います。
大きな幸せも大事ですが、小さいけれど確かな幸せを大切にする人生でありたいです。

「小確幸」の初登場はいつ?


さて、「小確幸」を紹介するときに、その初登場は何年なのかがちょっと曖昧だったので調べてみました。

Wikipedia によると、『ランゲルハンス島の午後』は単行本が光文社より1986年11月刊行されています。
となると、「小確幸は村上春樹が1986年のエッセイで用いた表現」と言えそうなのですが、そもそもが雑誌『CLASSY』に連載されたエッセイとまとめた本なので、雑誌掲載時が初登場年になるはず。

『ランゲルハンス島の午後』は『CLASSY』の1984年6月号(創刊号)から1986年5月号にかけて掲載された24本と書き下ろし1本の合計25本のエッセイを収録しています。

目次は下記の通り(本記事では冒頭の数字は「章」と呼びます):
1 レストランの読書
2 ブラームスとフランス料理
3 シェービング・クリームの話
4 夏の闇
5 女子高校生の遅刻について
6 財布の中の写真
7 みんなで地図を描こう
8 ONE STEP DOWN
9 洗面所の中の悪夢
10 時計はいかにして増加するか
11 トレーナー・シャツ雑感
12 CASH AND CARRY
13 UFOについての省察
14 猫の謎
15 哲学としてのオン・ザ・ロック
16 デパートの四季
17 BUSY OFFICE
18 ニュースと時報
19 小確幸
20 葡萄
21 八月のクリスマス
22 ウォークマンのためのレクイエム
23 「核の冬」的映画館
24 地下鉄銀座線における大猿の呪い
25 ランゲルハンス島の午後

雑誌掲載順に収録してあると仮定して対応づけると、
「1 レストランの読書」は1984年6月号掲載、
「2 ブラームスとフランス料理」は1984年7月号掲載、
「3 シェービング・クリームの話」は1984年8月号掲載、
という感じで進み、
「19 小確幸」は1985年12月号掲載であると思われます。

そうなると、
「小確幸は村上春樹が1986年のエッセイで用いた表現」
ではなく
「小確幸は村上春樹が1985年のエッセイで用いた表現」
が事実に基づく正しい表現になります。

エビデンスを探します。
古い雑誌のある図書館に行けばいいのですが、ネットで済ませたいところ。

『CLASSY』の創刊号からのバックナンバーの情報を検索していくと、一部だけですがヤフオクに当時のバックナンバーが出品されており、表紙画像以外に目次ページの画像も載っていました。

確認できた号とその目次写真からエッセイタイトルを抜き出しまとめました。


以上から、『ランゲルハンス島の午後』では雑誌掲載順に収録されているほぼ確実だと思われます。
19章である「小確幸」は1985年11月号(18章)と1986年1月号(20章)の間の1985年12月号に掲載されていたことは間違いないでしょう。

ということで、
「小確幸は村上春樹が1985年のエッセイで用いた表現」
でほぼ確定です。

1985年12月号の雑誌実物や目次写真を見れば100%確定するので、もし情報あれば教えていただけるとありがたいです。

また、そもそも「小確幸」という言葉自体の初出が CLASSY ではない可能性もゼロではないです。こちらも何かご存知の方はぜひ教えていただけると幸いです。

なお、生成AI(ChatGPT・Gemini)でも調べてみたのですが、一次資料に基づかない回答が多く、今回の調査には使えませんでした。

以上です。

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