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東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」[2015-03-22-1]に引き続き松尾豊准教授による人工知能の本2冊目。こちらはもうちょっと深めな人工知能の入門書。深めといっても、前述の本に比べて、という意味で、人工知能に興味のある人なら誰でも楽しめる内容です。

松尾豊 / 人工知能は人間を超えるか [Kindle版]

グーグルやフェイスブックが開発にしのぎを削る人工知能。日本トップクラスの研究者の一人である著者が、最新技術「ディープラーニング」とこれまでの知的格闘を解きほぐし、知能とは何か、人間とは何かを問い直す。

現在、第3次人工知能ブームが来ているということで過大な期待があるわけですが、過去を踏まえてできることできないことをきちんと説明しています。懇切丁寧なです。「やっぱ人工知能っていったってへぼいよね」とならずに、今度こそ壁を越えられるのか。ディープラーニングは単なる一過性のブームで終わるのか。今後しばらく楽しみです。まあ、私もこの業界の末席を汚す身として、そんな呑気なこと言ってる場合ではないのですが。

二箇所だけ引用:

われわれ人類が預かり知らぬところで、少人数のマッドサイエンティストによって、人類を征服するような人工知能が生み出されるという話は、「自己再生産」という仕組みの難しさを理解していない人の意見である、現実味がない。あるいは、「遺伝子工学と結びつくことで生命化するのだ」と言ったとしても、どのように遺伝子工学が人工知能と組み合わされると自己再生産するものができるのかという、ごくわずかでも可能性のある方法は提示されていない。
人工知能が人間を征服する心配はないという著者の意見。
一方、「人間が人工知能をよそおって人間を支配する」ってのは大いにありうると私は思っています。それをもって「ほらみろ、人工知能が人間を征服したじゃないか」という人が現れるのも織り込み済み。

これまで人工知能研究が冬の時代を迎えるたびに、研究者たちは苦渋を舐めてきた。当時を知る人たちからすると、人工知能の未来について、悲観的にならざるを得ないのも理解できる。一方で、世間の期待感が高すぎるのも問題である。学会全体として社会に対する適切な「期待値コントロール」が必要だろう。
後者の方、「期待値コントロール」は特に重要ですね。できないことをできると思わせないようにしたいですよ。過度な期待を煽らないように研究成果を出していってもらいたいところ。
ほんと急上昇急降下は避けたいですよね。若いスポーツ選手を「期待の若手」とちやほやしてダメにしちゃうとか、ノーベル賞級の研究成果だなんだと持ち上げて事件になるとか、そういうの。