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牛への道

2003-12-20-2 [Book]
宮沢章夫 / 牛への道 / 新潮文庫

まえがきの、何を押してもスポーツドリンクが出て来る自販機で茫然、と
いう話からいきなり笑えます。ぐっとくる話がいっぱいで、電車で笑いを
こらえるのに苦労。笑いをくいとめようと顔が引きつってしまいました。
例えば...

「月」についての本を借りるため図書館の児童向けコーナーへ行く話。
私も同じような経験があります。
一歩その一画に踏み込むと、刺すような子供たちの視線が浴びせられた。
よそ者に対する警戒心だ。あるいは敵意。「なにしに来やがったんだ」と
表情が語る。それで私は、しかたなしに声に出して言ってみた。
「うちの子に頼まれた本はどこの棚かな」
まるで、下手なドラマの説明台詞だ。しかも私には子供もいない。
ちきしょう、なんでこいつらのために芝居しなくちゃならないんだと
私はつくづく悔しかった。

英訳された俳句をまた日本語に訳して味わう話 (こういうネタは昔読んだ
別な本でもあったような気がする)。
静寂と落ち着きである。 蝉の声がする。 おお、岩にしみこむ。
痩せた蛙である。 「負けてはいかん!」 一茶は励ましている。
蠅である。 打ってはいけない! おお、手をこすり、足をこすり。

全体的に大仰で胡散臭い文章展開。私好みです。
ありがちなパターンとして、最初の方は大げさな展開だけど最後の方でカ
ジュアルになってドタバタ的にしめる、というのがあるんだけど、この本
ではそういう安易なパターンが少なく好感が持てます。

ためになる大仰表現を抜き書きして文章修行に励みたいと思います。