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梅田望夫さんのここ数年の思想が詰まった「ウェブ進化論」[2005-12-31-2]。昨日、六本木の青山ブックセンターで購入。今日読了。
Webで読んだりしたものも多いのですが、こうしてまとめて一気に読むと、なんというか、新しい時代が来たんだなあ、と感慨深くなりますね。

梅田望夫 / ウェブ進化論 - 本当の大変化はこれから始まる / ちくま新書


以下、気になったところを取り上げて、適当にコメントするという読書メモ。書評じゃないです、読書メモです。本を評価するのではなく、本から得られた知見についてあーだらこーだらと述べているだけですよ。
本当は内容を十分咀嚼して、自分の考えもしっかりまとめて主張しておきたいところですが、時間の問題もあることで、ええと、まあ、アウトプット主義で![2005-02-22-1](いつものパターン…)

■チープ革命(Cheap Revolution):

IT関連の必要十分な機能を誰もが安価に使えるようになった。
情報の発信はマスコミの専売特許じゃなくなった!
敷居が低くなったことにより、大量のコンテンツが新規参入。
10年前のインターネットブームのときは、まだ技術が未熟で、良質コンテンツもゴミに埋もれたまま。
しかしここ最近は、その中から良質なものを拾い上げる技術もすごい勢いで発達中。技術革新の主役はGoogle。
単なる検索ではなく、知の世界の秩序の再編成を目論んでいる!
今後もさまざまな技術革新で秩序の再編成が進行されていく!

ともかく情報発信の機会は平等に近くなったかと思います。
スタートは平等。アウトプット主義で継続も容易。
しかし、良質コンテンツとなるか、拾い上げられるか、
と言った「その先の話」はまた別問題ですね。

■次の10年への三大潮流(p.29):

「インターネット」「チープ革命」「オープンソース」。

オープンソースについては「大」とまでは言えない気がしています。
というか、前の二つが一般生活に直接影響を及ぼすのに対して、オープンソースはちょっと地味、というだけのことかもしれないです。

などと思ってたのですが「第五章 オープンソース現象とマス・コラボレーション」を読むと納得。
オープンソースと言ってもプログラム以外のリソースも念頭に置いているとのこと。これもアウトプット主義、ですね。とにかくオープンにしてフィードバックで改善していくわけで。

■ネット世界の三大法則(p.34):

1. 神の視点からの世界理解
2. ネット上に作った人間の分身がカネを稼いでくれる新しい経済圏
3. (≒無限大)×(≒ゼロ)=Something、あるいは、消えて失われていったはずの価値の集合。

「1. 神の視点からの世界理解」は、ネット事業者が扱う膨大な顧客情報、ログの分析により「全体を俯瞰した視点」から理解できるようになった、という話。溜めたり分析したりするコスト(コンピュータの)がチープになってきたからこそ可能になったとこのと。一昔前の「すぐにHDDがいっぱい」な世界を思うと隔世の感があります。リソースを気にしない「富豪化」思想でできることが増えてきて、嬉しい反面、それを理由にさぼってたこと、やらずに済ませてきたこともほっとけなくなって気もそぞろ。…なんてことはないですか?
「2.」はアサマシ(アフィリエイト、コンテンツ連動型広告)。

■ネットワーク・コンピューター(NC)とチープ革命(p.58):

データをネットのあちら側に置くかこちら側に置くか。
あちが側に置くというNCは登場が早すぎた(1995年頃)。
今はまさにその時。Gmailとかまさにあちら側。

とはいえ、思うんですが、今後ネットワークのデータやりとり速度がCPUやHDDみたいに爆発的に向上しそうにはないですよね。
すぐに限界が来そうです。
自分で撮った動画をあちら側に置いて軽快に使える日は来るのかなあ…。

■Yahoo!とGoogleの違い(p.94)。

ヤフーのサーチ担当副社長ビッシュ・マキジャニ曰く、「ヤフーは、人間が介在することでユーザ経験がよくなると信ずる領域には人間を介在させるべきだと考えている。」
Googleはコンピューターを人間の代わりにさせる(自動化)ことを重視。

■ロングテール:

クリス・アンダーソンの記事「ロングテール」の概略が載ってる(p.100)。
(ref. ロングテールの尾はとっても、とっても長い[2006-01-19-6])
ロングテールの例としてクリス・アンダーソンが挙げているamazonよりもGoogle AdSenseの方が適切であるとの梅田さんの意見。なるほど。
Googleは自分達はロングテール追求企業だと宣言したそうな。で、ロングテール部分、例えばAdSenseなどはセルフサービスで人件費を省く。
合理的だけど、サービスの質の問題もあるんじゃないかな、と思う。
ロングテールだからと言っておろそかにできない世の中かも。
(ref. [2006-01-30-1][2005-12-11-1])

■玉石混交:

ネットの大量のコンテンツ。権威側からの見れば「そんなコンテンツなんか大半はクズ」。玉石混交で石だらけ。
しかし「石」をふるいよけて「玉」を見出す技術が進化してくるのを目のあたりにして、いまや「玉」のほうと向き合わざるを得なくなった。「石」を「石」だと言うことは簡単でも、「玉」を「玉でない」と言うのは苦しい。
(p.147)

なんか痛快!
ところで、ふるいわける技術よりも、探して自由に取り出せる状態になってるということの方が重要ですね。
チープ革命で後者があって初めて前者も活かせると。
web.archive.org など溜めまくってるわけですが、そのうちふるいわけ技術が適用されたりするとスゴイ世界になりそうだけど、過去の掘り返しにガクガクブルブル。などなど。

■総表現社会=チープ革命×検索エンジン×自動秩序形成システム (p.153)。

私は、外部のデータだけでなく、自分のデータ(外には出せないプライベートなデータ)の秩序をどう形成するかに興味があります。
まあそれはIT技術よりも自己啓発的な技術が有効な分野かな。

■英語圏の発展途上国の人はアドセンスのちょっとした収入だけで生活できる。経済格差の是正!(p.160)

とはいえ、発展途上国の比較的富裕な層(PCやネットが使える層)しか救えない気がします。「持つ」ものはますます富む。貧困層は貧困なまま。
まあ富むものがどんどん富めば、下にもお金が流れるからよしとするかな。
(ただ、実際に途上国でそのようにちゃんと流れているかどうか謎)

■「検索エンジンに引っかかってこない情報はこの世に存在しないのと同じですよ」(p.182)

結局、新たな秩序の確立とともに、検索エンジンが新たな権力者となるだけ。それが良い権力者か否かがポイント。最初は良いけどそのうち…、というパターンになりそう。権力に対抗するには、草の根検索エンジンや草の根ディレクトリ(ヤフー風な)を大切に育て、そのうちそれらを統合して分散型DBとして使えるようにする、みたいな展開が良いかなあ。
P2P?

■組織を辞めたことのない人たち。

日本という国は「いったん属した組織を一度も辞めたことのない人たち」ばかりで支配されている国であるという再発見をした。(p.233)
これから日本は、大組織中心の高度成長型モデルではない新しい社会構造に変化していき、私たち一人一人は、過去とは全く違う「個と組織との関係」を模索しなければならない。そういうことを感知するセンスのいい若い人たちに、「組織を一度も辞めたことのない」エスタブリッシュメント層の言葉は、むなしく響くばかりなのではないだろうか。(p.234)

同意、同意。

■本書で紹介されてた『「みんなの意見」は案外正しい』という本がおもしろそう。

「みんなの意見」は案外正しい


■関連記事:

- 著者梅田さんのブログ My Life Between Silicon Valley and Japan:
-- 梅田望夫がブロガーと語る「ウェブ進化論」ポッドキャスティング
<http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060207/p1>
(まだ聴いてない。)
-- 「ウェブ進化論」: あとがきの一部、発売日の東京でのイベント
<http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060130/p1>

- ネット企業は技術志向の経営を--梅田望夫氏が語るウェブの進化
<http://japan.cnet.com/interview/story/0,2000050154,20095905,00.htm>

- ブロガーと梅田望夫が語る「どうなる? マスとネットの力関係」 (1/3)
<http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0602/08/news070.html>

- 近況 - 梅田望夫がブロガーと語る「ウェブ進化論」ログ
<http://d.hatena.ne.jp/pekeq/20060208/p1>
(長いのであとで読む)