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池上彰さんが東京工業大学で2014年2月から行った「現代世界の歩き方」の講義録を大幅に加筆した本。

池上彰 / この社会で戦う君に「知の世界地図」をあげよう 池上彰教授の東工大講義 (文春文庫) [Kindle版]

東京工業大学の教授に就任した池上彰さん。理系学生への講義の内容が一冊に。「悪い会社・優れた経営者の見分け方」「なぜ優秀な理系学生がオウム真理教に?」「君ならサムスンに移籍するか?」「日本国憲法は改正すべきか」「リーマン・ショックとは何だったのか」「君は年金に入るべきか」「なぜ反日運動が起きるのか」etc.知るべきことを分かりやすく。ビジネスマンも必読です。

いつもの語りかけ口調の池上節なのですが、学生相手の講義ということで、分かりやすさマックス。広く浅くそれでいてポイントはおさえてます。4年ほどまえの講義なので若干古く感じることもあるけど、本質的なとこは変わらず。

池上本は、継続的に「知らないと恥をかく世界の大問題」シリーズを読んでるし、他の著作もちょくちょく読んでるので、そういう点では中身に新鮮味はないけど、復習として考えるとスーッと入って来るのでとてもよろしいです。

講義の最終回が学生に意見を述べてもらう回なんだけど、学生さんたちから多様な考え方が出て、論点や議論方向がどんどん変わって、白熱教室っぽくて良いですね。

この「池上彰 東工大講義シリーズ」のKindleで出てる他の2冊もすでに購入してあるので、ぼちぼち読んでいきたいと思います。


以下、読書メモ。

戦時中の日本での原爆開発の話。当時から縦割り。
陸軍は理化学研究所、海軍は京都帝国大学。それぞれが別個に研究をしていました。すべては縦割り組織の下で進められていく。大規模な統一プロジェクトとして推進されたアメリカとは、ここでも大きな差がありました。もちろん、日本が原爆開発を早く進めればよかったと言っているわけではありません。物事の進め方において、日米でこうした差が出たということを言っておきたいのです。

そりゃそうだけど無茶いうな案件。つらい話。
ちなみに男女交際は、この世界で生きていくための必要欠くべからざる「教養」です。男性にとって、女性の自由な発想やコミュニケーション力に学ぶところは大きいですし、消費市場も女性が主導権を握っていますから、「女の気持ち」がわからないと、ものをつくる上で致命的になりかねない。
 特に理系男子は、男ばかりの生活になりがちです。これもまた、健闘を祈ります。

なぜ民法のテレビ番組は54分に終わるのかという話。これは知らなかった。そういう仕掛けなのね。ビール風ビール[2012-04-10-1]みたいな。
CMが多すぎないように、番組の放映時間の量によってCMの放映時間量に基準を設けています。たとえば5分以内の番組であれば、CMの放映時間は1分です。5分を超えて10分以内の番組であれば、CMは2分、10分を超えて20分までは2分30秒、20分を超えて30分までなら3分
番組を54分と6分に分けたのです。54分でもCMは6分ですが、6分番組なら、CMは2分入れられます。合計で8分のCMを入れられるようになったのです。1時間の枠を、54分と6分とに分割することで、CMの放送時間を2分増加させることができたのです。
与えられた条件の中で隙間を見つけて利益を上げる。いかにも日本企業の得意とする手法が、ここでも発揮されたのです。

東工大での講義を始める経緯について。
理科系の専門家の発言が、文科系の国民に伝わらない。世の中が、あまりに「文科系」と「理科系」に分かれてしまい、大きな断層が生じているのではないか。これは、今後の日本にとって看過できない問題ではないか。  私に、こんな問題意識が芽生えていたときに、「東工大の学生たちに、社会科学的な教養を身につけるお手伝いをしていただけませんか」とのお誘いをいただき、決断したのです
いつも理系の専門分野を学んでいる学生たちに、現代世界の構造や成り立ちの基礎を知ってもらうことを主眼目にしています。自分たちの周りの社会がどうなっていて、どのように動いているかを知ることは、現代に生きる者にとって必須の知識だからです。  東工大の学生は、将来技術者や研究者の道を進む人が多いことも考慮して、企業のあり方や技術者の生き方・働き方を考えてもらう内容も盛り込みました。
本書は、東京工業大学2012年度前期の授業をもとに、「日経新聞」に連載した「池上彰の教養講座」(2012年5月14日~9月3日)を大幅に加筆、修正したものです。
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