ローマ人の物語(32) - 迷走する帝国(上)
2008-09-08-2
[BookReview]
■塩野七生 / ローマ人の物語(32) - 迷走する帝国(上)
「ローマ人の物語 - 迷走する帝国」(上・中・下巻)[2008-09-05-3]は、221年から284年までの73年間の物語。
この上巻はカラカラ帝からスタート。
カラカラ帝による、すべての住民にローマ市民権を与えるという、人道的ということなら非難しようがない「アントニヌス勅令」が帝国の崩壊を速める大きな原因の一つになったという話が興味深かったです。
がんばれば取れるという「取得権」であったローマ市民権が「既得権」になってしまい、ローマ市民も、そうでなかった人もどっちらけ(死後?)になってしまった、と。
ブランドの一般化、みたいなもの。
例えば「大卒」というブランドが就職に有利という世界だったとして、平等のために「すべてのの人に「大卒」の資格を与える!」
ということをやってしまうと、どっちらけーー!
まあ、だいぶ違うけど、雰囲気としてはこんな感じ。
ローマ市民には皇帝への控訴の権利があり、属州に住んでいる人が属州総督に有罪宣告されても、皇帝に対して控訴ができたのですが、「アントニヌス勅令」により全員がローマ市民になったので、訴えの件数が増えてさばききれない状況に。
で、15年くらい後のアレクサンデル帝の時代に、事実上、皇帝への控訴がなくなってしまった。
現在の政治状況にあてはめてみることもできますが、時代や背景や思想が異なるので慎重さが必要ですね。
とはいえ、平等とは何なのかについてはいろいろと考えさせられますね。
「ローマ人の物語 - 迷走する帝国」(上・中・下巻)[2008-09-05-3]は、221年から284年までの73年間の物語。
この上巻はカラカラ帝からスタート。
カラカラ帝による、すべての住民にローマ市民権を与えるという、人道的ということなら非難しようがない「アントニヌス勅令」が帝国の崩壊を速める大きな原因の一つになったという話が興味深かったです。
がんばれば取れるという「取得権」であったローマ市民権が「既得権」になってしまい、ローマ市民も、そうでなかった人もどっちらけ(死後?)になってしまった、と。
ブランドの一般化、みたいなもの。
例えば「大卒」というブランドが就職に有利という世界だったとして、平等のために「すべてのの人に「大卒」の資格を与える!」
ということをやってしまうと、どっちらけーー!
まあ、だいぶ違うけど、雰囲気としてはこんな感じ。
ローマ市民には皇帝への控訴の権利があり、属州に住んでいる人が属州総督に有罪宣告されても、皇帝に対して控訴ができたのですが、「アントニヌス勅令」により全員がローマ市民になったので、訴えの件数が増えてさばききれない状況に。
で、15年くらい後のアレクサンデル帝の時代に、事実上、皇帝への控訴がなくなってしまった。
これ以降、ローマ人は控訴権を失うのである。
これもまた、全員に与えたことでかえって全員が失った、一例なのであった。
私とはちがう考え方をする人がいるのも当然で、その人たちは言うだろう。
一部の人のみが享受していた権利は、それを全員が享受できないとなれば全員が享受しない方が正しいのだ、と。
ローマ市民権とは既得権ではなく、得ようと思う人には門戸は開かれていた取得権であることに特色があったのだが、それを重視するのはリベラリズムの立場である。
そのリベラルな考え方に立っていた「取得権」を「既得権」に変えたのが、カラカラの「アントニヌス勅令」だった。
ローマは、ローマである理由を少しずつ、自らの手で失いつつあったのである。(p.138)
現在の政治状況にあてはめてみることもできますが、時代や背景や思想が異なるので慎重さが必要ですね。
とはいえ、平等とは何なのかについてはいろいろと考えさせられますね。