教育におけるエビデンスの重要性 - 中室牧子『「学力」の経済学』
2016-07-03-1
[BookReview][Kindle]
エビデンス!エビデンス!
医療関連では当たり前である、科学的根拠に基づく評価を教育関連にあてはめた研究を紹介している本。こんな研究がありますよ、というサマリ的な内容なので、分かりやすくてさらりと読めます。自分でいろいろ考えたりするヒントになるかと思います。なんにせよ、育児・教育関連のもろもろの政策・施策はちゃんと費用対効果を調べてから本格実施してほしいですね。
■中室牧子 / 「学力」の経済学 [Kindle版]
以下、読書メモ:
著者の主張など。
少人数学級について。
インプットとアウトプットのどちらを褒めるべきか。
よくきくけど、ほめ方の話。
習熟度別学級について。
教員の給与について。ブラック化。
東大生の親の収入について。これもよく聞く話。
目次:
医療関連では当たり前である、科学的根拠に基づく評価を教育関連にあてはめた研究を紹介している本。こんな研究がありますよ、というサマリ的な内容なので、分かりやすくてさらりと読めます。自分でいろいろ考えたりするヒントになるかと思います。なんにせよ、育児・教育関連のもろもろの政策・施策はちゃんと費用対効果を調べてから本格実施してほしいですね。
■中室牧子 / 「学力」の経済学 [Kindle版]
「データ」に基づき教育を経済学的な手法で分析する教育経済学は、「成功する教育・子育て」についてさまざまな貴重な知見を積み上げてきた。そしてその知見は、「教育評論家」や「子育てに成功した親」が個人の経験から述べる主観的な意見よりも、よっぽど価値がある—むしろ、「知っておかないともったいないこと」ですらあるだろう。
本書は、「ゲームが子どもに与える影響」から「少人数学級の効果」まで、今まで「思い込み」で語られてきた教育の効果を、科学的根拠から解き明かした画期的な一冊である。
「ゲームは子どもに悪影響?」
「子どもはほめて育てるべき?」
「勉強させるためにご褒美で釣るのっていけない?」
個人の経験で語られてきた教育に、科学的根拠が決着をつける!
以下、読書メモ:
著者の主張など。
日本ではまだ、教育政策に科学的な根拠が必要だという考え方はほとんど浸透していないのです。
米国では、自治体や教育委員会が、自ら積極的に教育政策の効果を科学的に検証し、そこから得られた知見が、自治体や国など全体の政策に反映されるようになっています。これを、「科学的根拠に基づく教育政策」または「エビデンスベーストポリシー」といいます。
どこかの誰かの成功体験や主観に基づく逸話ではなく、科学的根拠に基づく教育を。
少人数学級について。
少人数学級は学力を上昇させる因果効果はあるものの、他の政策と比較すると費用対効果は低い政策
少人数学級は貧困世帯の子どもには効果がとくに大きかったことが明らかになっています
インプットとアウトプットのどちらを褒めるべきか。
この2種類の実験のうち、子どもたちの学力を上げる効果があったのはどちらでしょうか。
インプットにご褒美を与えると、子どもたちは本を読んだり、宿題をしたりするようになるのでしょうが、必ずしも成績がよくなるとは限りません。
方、アウトプットにご褒美を与えることは、より直接的に成績をよくすることを目標にしているのですから、直感的には、アウトプットにご褒美を与えるほうがうまくいきそうに思えます。
しかし、結果は逆でした。学力テストの結果がよくなったのは、インプットにご褒美を与えられた子どもたちだったのです。
とくに、数あるインプットの中でも、本を読むことにご褒美を与えられた子どもたちの学力の上昇は顕著でした。
よくきくけど、ほめ方の話。
「子どものもともとの能力(=頭のよさ)をほめると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下する」ということです。
子どもをほめるときには、「あなたはやればできるのよ」ではなく、「今日は1時間も勉強できたんだね」「今月は遅刻や欠席が一度もなかったね」と具体的に子どもが達成した内容を挙げることが重要です。そうすることによって、さらなる努力を引き出し、難しいことでも挑戦しようとする子どもに育つというのがこの研究から得られた知見です。
習熟度別学級について。
学力の高い優秀な友人から影響を受けるのは、そのクラスでもともと学力の高かった子どものみなのです。中間層やもともと学力の低い子どもたちは、何ら影響を受けないことがわかっています。
最近の研究では、習熟度別学級は、ピア・エフェクトの効果を高め、特定の学力層の子どもたちだけではなく、全体の学力を押し上げるのに有効な政策であることを明らかにするものも出てきています
子どもの学齢が低い時に習熟度別学級を実施すると、格差が拡大し、平均的な学力も下がってしまうと指摘されています。
教員の給与について。ブラック化。
教員の給与を上げることが、教員の質を高め、子どもたちの意欲や学力の改善につながることを示したエビデンスは決して多いとはいえません
東大生の親の収入について。これもよく聞く話。
東京大学では、親世帯の平均年収は約1000万円となっており、世帯収入が950万円以上の学生の割合がなんと約57%を占めています。
目次:
第1章 他人の“成功体験”はわが子にも活かせるのか?
- データは個人の経験に勝る
第2章 子どもを“ご褒美”で釣ってはいけないのか?
- 科学的根拠に基づく子育て
第3章 “勉強”は本当にそんなに大切なのか?
- 人生の成功に重要な非認知能力
第4章 “少人数学級”には効果があるのか?
- エビデンスなき日本の教育政策
第5章 “いい先生”とはどんな先生なのか?
- 日本の教育に欠けている教員の「質」という概念