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ジェフリー・ムーア / ライフサイクル イノベーション --
成熟市場+コモディティ化に効く 14のイノベーション


キャズム」でおなじみのジェフリー・ムーアの新刊
(出たのはちょっと前だけど)。
本書の議論の中心はイノベーションと慣性力だ。企業の生存競争における
基本的な質問、「永遠にイノベーションを続けるにはどうしたらよいか」
に対する答えを追及するための議論だ。(p.xiv)
という本です。

全体を通してシスコがケーススタディとしてとりあげられていますが、
シスコに関する本ではありません。
企業が永遠にイノベーションを継続できるかについての本です。

いつもの通り、議論の本質は実際に本を読んでもらうことにして、
周辺部分などをメモ&コメント:

「必要にして十分」を目指すという話(重要):
イノベーションへの投資を怠らないのに企業の業績がいまいちなとき…
これらの企業は、「クラス最上級を目指す」という考え方の罠にはまって
いる。これは不適切な戦略だ。適切な目標は「他社より上に立つ」、
つまり、競合他社が追随できないレベルの差別化を行うこと、または
「必要にして十分」、つまり市場が求める標準レベルをクリアするが、
それ以上を追求しないということだ。(p.vii)
これは個人のキャリア戦略(技術習得戦略)にも当てはまるかと。
深入りしすぎず、適切なレベルで見切る。
プロとして「深入り」は差別化のために必須だけど、「深入りしすぎ」は
避ける。既存の世界の best in class よりも新しい世界の good enough
の方が投資効率良さげ。

コアとコンテキストの話(重要):
コアとは競合他社に対する長期的な優位性をもたらしてくれる要素で、
コンテキストとはコア以外のあらゆる要素(p.269)。
例えば、タイガーウッズの場合、コアはゴルフで、コンテキストは広告や
ブランドなどの収入。ここでウッズの収入の90%がコンテキストからだと
しても、コンテキストに集中して時間を投資すべきではない(p.15)。
ゴルフでのパフォーマンスがあってこそのタイガーウッズブランド。
ゴルフの練習などに時間を投資すべき。コアがあってこそのコンテキスト。
コアを作り出さなかったり、適切に改善していかなかったり、差別化要素
が失われていくのを放置したりしていると、企業が生き延びて行くために
必要な利益率を生み出せなくなる。コンテキストは経営資源の必要量の点
ではコアを上回っているかもしれないが、戦略的重要性ではコアが
コンテキストを上回っている。つまり、コアにより多くの時間を割き、
コンテキストに割く時間を削減することが重要なのだ。(p.269)
私個人で考えてみると、コンテキストはブログやHTMLやCSSやPerlや
JavaScriptなどで、コアは自然言語処理技術。
最近、コアにかける時間が少ないなあ。もっと時間を投資せねば。

コモディティ化:イノベーションがなければ、製品やサービスは次第に他
社のものと類似してくる。→これがコモディティ化。
コアがコモディティ化してコンテキストになっていく。

「テクノロジー導入ライフサイクル」と「カテゴリー成熟化ライフサイクル」:
これらは異なる市場力学の影響力を受ける(p.23)。
前者は、アーリーアダプター→キャズム越え→ひろがりんぐ。
後者は、その後に続く道。
成長市場→成熟市場(永遠に持続可能)→衰退市場→終了。

「コンプレックス・システム」と「ボリューム・オペレーション」:
前者は、複雑な問題を解決するコンサルティング的要素が大きい個別
ソリューションが提供される(p.37)。
後者は、標準化された製品と商取引により大量販売市場でのビジネス遂行
に特化(p.38)。
この本で著者は、
中途半端やめてどちらかの戦略を選択・意識すべきと主張している。

衰退市場におけるイノベーションの管理。レミングの行進の中にいること
を認識する必要あり。
目標は先頭に立つことではない、行進が崖から転落する前にそこから
抜け出すことなのだ。(p.223)

バブルの波に乗らないと危険、という困った話。
バブルに踊らない企業の株価は低迷する。このような企業は「時流に乗り
遅れている」と思われてしまうからだ。そして、このような企業はうまく
バブルの波に乗り株価が過大評価されている企業による買収のターゲット
になってしまう。(p.249)
困るよなあ。でもどうしようもないよなあ。
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