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増井俊之 / スマホに満足してますか? ~ユーザインタフェースの心理学~ [Kindle版]

コンピュータのハードウェアは劇的に進化しているのに、使いやすくなっているようには感じられない。また、スマホは知的生産には不向きで、流れてくる情報を見るだけの時間潰しのツールになっている。本来コンピュータは、人間の能力を拡大し、いつでも/どこでも/誰でも使えるツールとして構想されてきたものだ。では、その方向に正しく進化するにはどうすればいいのか。ユーザインタフェースの第一人者がわかりやすく解説する。

タイトルだけみると、スマホに対する批判本みたいな印象をうけますが、そういう本ではありません。副題の「ユーザインタフェースの心理学」の通り、UIの主に心理的な側面に関するエッセイ集ですね。UIの話や増井さんの発明の話など過去から現在までのネタがいろいろ詰まっており、頭のあちこちが刺激されて楽しいです。増井さんの集大成、というか、インデックス的な内容になっています。増井ワールドにようこそ!みたいな。

ただ、読んでいると、どこかで読んだようなデジャブな気分。たぶんブログとか雑誌連載とかで読んだ文章もいろいろあるんでしょうね。

以下、読書メモ:

ウェブサービスで情報を共有しようという場合、便利で面白くなければならないのは当然ですが、それだけでは不充分であり、ジマンパワーを発揮できるような仕組みがなければ駄目だということを痛感しました。Web2.0的サービスを流行らせるためにはジマンパワーの活用が最も重要なのかもしれません。サービスが有用かどうかよりも、ジマンパワーを発揮できるかどうかをまず検討するべきなのでしょう。
増井さんといえば自慢パワー。自己顕示欲を満足させる仕組みはいつの時代になっても重要ですね。

安定化を求める心理を「修正欲」として利用すると、「人力パワー」を活用するサービスが可能になります
修正欲を活用するという話。なんか気持ち悪いので直したい、という気分を引き起こし作業してもらう。修正欲≒ツッコミ欲。ツッコマレ要素を残し、ツッコミを待つ、みたいな話にもつながるな。

誰かがシンプルさを追求したインタフェースを作った後で別の人が保守を受け継いだ場合、最初の設計者が苦労して省いた機能がつけ加えられてしまい、シンプルさが台無しになってしまう可能性があります。無駄なものを後で追加されないようにするには、誰でもわかる形で省略の思想を表現する必要があるのかもしれません。
あるあるネタ。共同作業だとよくありますね。シンプルにした理由とか考え方も共有しないといけないのですが、面倒くさいんですよねえ。結局、自分しか修正できない・しないようにする、ってなっちゃう。反省。

知識を得ることによって知識がないときの状況がわからなくなるという現象は、「Curse of Knowledge」(知識の呪縛)と呼ばれています。
これに関連して。自分で作ったプログラムを他人に使ってもらうときの説明資料は細かく実行例(コマンド+オプション)をつけることにしています。あたりまえずぎていらないだろと思われる実行例とか、意外と重要。あと実行例はコピペで動くことは必須。サンプルデータも用意して、実行例ではちゃんとディレクトリも指定。

一度でもうまくいったことがあるならば、その後で多少スランプが続いたとしても「脳の中で試行錯誤が行なわれているのだ」と解釈して練習を続ければ、一定期間後にスランプを脱出できる可能性は高いといえます。  
練習と上達の話。スランプの解釈と脱出方法。「練習回数と上達度は冪乗則に従う」という「練習の冪乗法則」(by 木村泉)も重要。

ユーザが求めるものを設計して作ることは非常に重要ですが、どういうものをどういうデザインで作るべきかについてユーザの意見を求めてはいけません。
そうですね。
そうですね……。

ドナルド・ノーマンの『誰のためのデザイン?』は、ユーザ中心設計の重要さを知るための古典です。この本では、ユーザを無視した製品が世の中にあふれていることを指摘して、変な製品にユーザが我慢する必要などないことを世間に知らしめた意義深い本です。
読みましょう! 良い本です。おすすめ本。
- ドナルド・A. ノーマン / 誰のためのデザイン?-認知科学者のデザイン原論


時間がたつ速度が年齢に比例するという「ジャネーの法則」
これ、ジャネーの法則っていうのかあ。19世紀から知られていたそう。
使用例「そんジャネー!」

あと、確率は直感に反することもあるという話で出てきた「兄弟の性別問題」。面白いので別記事に書きます。