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献本いただきました。ありがとうございます。
(ref. [2010-04-18-6])

長神風二 / 予定不調和

「体細胞由来クローン」
「脳画像技術による嘘発見器」
「遺伝子ドーピング」…。

最先端の科学によって登場しつつある“今までになかったもの”は、単に生活を便利にするだけでなく、私たちの価値観を揺さぶる存在に。

ある技術だけを推し進めた際に生じる「予定不調和」。
一見、気味悪そうな現象に「調和」をもたらすためには、何が必要なのか?
近未来を想定したフィクションで多彩な事例を紹介しつつ、研究の今を描き出す異色の作。

技術の進歩を前提に思い描いていた未来。しかし想像とは異なる現実。
「やろうと思えばできた」ことなのに予測されなかった。もちろん予測してた人はいるだろうけどメジャーな予測ではなかったわけで。

このような技術の進歩とその予測の不調和について解説した本です。
扱っているテーマはこんな感じ。

- スマートドラッグ(薬物による勉強・仕事のドーピング的効率化)
- 脳機能の直接観測による試験・能力判定(例えばMRI利用の入試)
- 遺伝子ドーピング(遺伝子治療の技術で可能な遺伝子操作ドーピング)
- クローン
- 遺伝子組換え食品
- デザイナーベビー(遺伝性疾患の「治療」と機能の「増強」)
- ニューロマーケティング(脳科学によるお金儲け)
- ブレインマシンインターフェース(脳で操作、思っただけで操作、念力、サイボーグ)
- 脳機能の直接観測による嘘発見器(嘘をつくときに一般的に活発になる箇所の測定)
- パワードスーツ(筋肉の電気信号)
- レコメンド機能(過剰なものは黄身わらごられる)

各テーマの導入部は物語風になっており、具体的な問題点が明確に分かる作りです。

終章の言葉「特定の技術だけが進む未来を描けば、それは予定不調和」は納得です。いろんな技術が同時進行で進んでいくし、社会もさまざまな方向に変化していくわけで。技術先行でゆがんだ世界に進みそうになっても社会変化で予想もしない収まり方でうまくいきそう(楽観的)。技術の夢と現実のギャップの多さがこれを物語っているような気がします。
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