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ランダムハウス講談社様より、
献本頂きました。ありがとうございます!

リーアンダー・ケイニー(著), 三木俊哉(訳) /
スティーブ・ジョブズの流儀

本書は、
ジョブズとアップル社を12年以上にわたって追いつづけてきた著者が、
ジョブズの事業哲学を詳細に分析した一冊だ。
ジョブズ本人に限らず、その周辺の人たちに至るまで
さまざまな角度から取材・資料収集し、無数の「点」をつないでいった先に、
偏見から解放されたジョブズ像、アップル像が映し出される。

スティーブジョブズ関連の本は読んだことがなかったので、
非常に楽しめました。

やはり一番ひびいたのは、
「デザイン=機能」という考え方ですね。
機能といっても、性能とか多機能とかではかく、使いやすさ。
もっというと、シンプルさ、選択肢の少なさ、
迷いが少ない、組み合わせによるトラブルが少ない、
などいろいろな要素。
本書でも述べられていたけど、
デザイン、というか、シンプルさを追求すると
システムの硬直化、固定化につながるという側面はあります。
十年前、二十年前はコンピュータの性能向上が激しかったので、
「拡張できない」ことにより保たれるシンプルさは、
ユーザに対する嫌がらせに近いものがあったかと思います。
でも、ここ数年のPCは、普段使いにおいて必要十分な実効性能
があるので、拡張機能などの追随を目的とした要素の必要性は
減っていますよね。
「容量足りないから iPod の HDD(or メモリ)交換したい!」
なんてこと全然思わないし。
てなわけで、これからますますアップル的なシンプル路線が
猛威をふるうだろうなあ。

§

いくつか抜き書き。

デザインの段階や初回発表後に、
新製品にはどんどん機能が追加されがちだが、
そんな「機能過多」を避けるため、
ジョブズは徹底した選択と集中にこだわる。
携帯電話が機能過多のよい例だ。
携帯電話の機能は不可能の文字がないほどの充実ぶりだが、
その圧倒的な複雑さゆえ、ボリュームの調整や留守電のチェック
といった基本機能が埋もれてしまう。
複雑な選択を果てしなく強いて消費者を混乱させないよう、
ジョブズはアップルで次のような持論を大切にしている。
「フォーカスとは『ノー』と言うことである」
(p.49)
昔、「機能いっぱい!はもういいや」[2005-01-18-2]
というブログ記事で書いた、
iPod への対抗軸として「多機能」を持ち出す話が象徴的です。
自己引用しておきます。
iRiver Americaの広報担当、ゲーリー・バード氏:
大まかに言って、(iPod shuffleは)エントリー向けであり、
当社と直接競合する製品ではない。インタフェースもないし、機能も多くない。
当社の製品はFMチューナーや録音機能など数多くの機能を備え、
好きなFM番組を目覚ましアラームに設定して、録音し、
それからまたスリープ状態に戻ることも可能だ。
Rioのトレス氏:
結局、総額は200ドル近くなり、しかもこれにはFMチューナーや
SD拡張カードが含まれていない
Creativeのヴァカンテ氏:
コンシューマーが明らかに求めている液晶画面を備えていない[...]
MuVoはFMラジオ、FM録音、ライン入力録音機能を内蔵しており、
iPod shuffleはこれに太刀打ちできないだろう。
製品デザイン、インタフェースについては、
ノーマンの著作[2008-10-14-2]に同意することが多いのですが、
ジョブズはまさにそれを具体化している人物、ということで。

§

ジョン・スカリーの言葉:
スティーブのやり方がほかのみんなとちがうのは、
最も重要な決定は何をするかではなく
何をしないかを決めることだ、と信じていた点だ
(p.80)
何をやらないのかを決めること。
ライフハック的なチップスでもこういうのがありますが、
足していくよりも削っていく方が効率的な面もありますよね。

§

あと、最後にひとこと。
スティーブジョブズ、または、ジョブズ的な人とは
いっしょに働きたくないなー。
こういう人が上司だったら健康に害があるわな。
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