橘玲「雨の降る日曜は幸福について考えよう」(文庫版タイトル「知的幸福の技術」)
2006-11-11-4
[BookReview][Money]
朝から雨の土曜日。
この本を読んで、雨の降る土曜に幸福について考えてみた。
まあ、雨は夕方にはやんだけど。
■橘玲 / 雨の降る日曜は幸福について考えよう
橘玲(たちばなあきら)のエッセイ。
タイトルは自己啓発本っぽいけど、さにあらず。
年金、医療、教育、不動産など、人生における諸問題を経済の視点から考える本です。前半は日経新聞日曜版に連載していたもの。連載当時、ちょうど日経新聞をとっていたのでよく読んでました。後半は書き下ろし。
3年前に読んで衝撃を受けた「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」[2003-01-31-2]とともにオススメです。いや、ほんと、視界がちょっと広がる感じ。しんみりしたりもします。読むべし!
以下、読書メモ。
本筋と関係あることやないことやいろいろ:
「保険は損をすることに意味のある宝くじ」とのこと。なるほど。(p.39)
厚生年金のやばさと混同して国民年金もあぶないような気がしてくる問題、というのがあるらしい。
医療の話。アメリカと比べ、病院を自由に選べたり、医療費の大半が払い戻されたり、と日本の医療保険制度はかなり恵まれているのだが、こんな問題も。
教育の話。詳細は本書を読んでもらうとして、1パラグラフ引用:
持ち家か賃貸かという話。
日本でカジノの合法化ができないのは、公営ギャンブルの既得権を守るためである、という話(p.212)。ラスベガスのカジノのテラ銭は 1〜5%。
日本の公営ギャンブルは25%、宝くじは50%。合法化して民間参入されると、公営ギャンブルは成り立たず、関連団体も存続できず、天下り先もなくなる、と。
福祉と極右政党の話。
福祉社会の行きすぎは確かにヤバイ気はするが。
真偽はともかく、北欧での非白人への激しい差別のウワサをネットで見かけたりしたなあ。
最後に。すべてを投げ出して、オーストラリアへ旅に出て、戻ってきて、さらに荒んだ生活になった友人について。
旅はいつか終わる。
この本を読んで、雨の降る土曜に幸福について考えてみた。
まあ、雨は夕方にはやんだけど。
■橘玲 / 雨の降る日曜は幸福について考えよう
- 追記091010: 文庫版が出ました。
- 追記160624: Kindle版もあります。
橘玲(たちばなあきら)のエッセイ。
タイトルは自己啓発本っぽいけど、さにあらず。
年金、医療、教育、不動産など、人生における諸問題を経済の視点から考える本です。前半は日経新聞日曜版に連載していたもの。連載当時、ちょうど日経新聞をとっていたのでよく読んでました。後半は書き下ろし。
3年前に読んで衝撃を受けた「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」[2003-01-31-2]とともにオススメです。いや、ほんと、視界がちょっと広がる感じ。しんみりしたりもします。読むべし!
以下、読書メモ。
本筋と関係あることやないことやいろいろ:
「保険は損をすることに意味のある宝くじ」とのこと。なるほど。(p.39)
厚生年金のやばさと混同して国民年金もあぶないような気がしてくる問題、というのがあるらしい。
国民年金の場合、将来の保険料引き上げを考慮しても、支払った額以上の年金が戻ってくる可能性が高い。そのうえ保険料は全額、所得から控除され、受給時にも公的年金控除の適用が受けられる。いずれも民間の保険会社ではあり得ない大盤振る舞いだ。国民年金の保険料を支払うのは、経済的にはかなり合理的な選択なのだ。ま、そんな宣伝はしないだろうけど。という、ネタにマジレスはともかく、いいよなあ国民年金…。国民年金入りたい!
対岸の厚生年金で火の手が上がるのを見て、国民年金加入者は続々と逃げ出していく。これはかなり皮肉な光景ではないだろうか。
社会保険庁は、「厚生年金は大損だが、国民年金は絶対儲かる!」と大々的に宣伝したらどうだろう。[...] (p.55)
医療の話。アメリカと比べ、病院を自由に選べたり、医療費の大半が払い戻されたり、と日本の医療保険制度はかなり恵まれているのだが、こんな問題も。
有名病院で三分間の診療を受けるのに半日かかる。誰だって、高名な医者に診てもらいたいと思う。病院の選択が自由で医療費が安ければ、患者の集中は防ぎようがない。結果的に、日本では暇な人ほど質の高い医療を受けられる。
金で患者を差別するのは不平等である。では、時間による差別は何と呼ぶのだろう。(p.66)
教育の話。詳細は本書を読んでもらうとして、1パラグラフ引用:
知人はこの底辺校に奉職しているが、自分の職場は教育機関ではなく、生徒の収容施設だと言う。我が校の責務は、日中、異様な風体の子供たちが街を徘徊し、健全な社会生活を脅かすのを阻止することだ。教師たちは、地域社会の期待に応えるべく重責に耐えている、と説明された。うごごごお。ぐわはあ。(連載当時の抜き書き→[2004-02-16-4])
(p.72)
持ち家か賃貸かという話。
不動産市場が効率的であれば、持ち家と賃貸に優劣はない。(p.85)まあ、確かにそうかも。
持ち家か賃貸かはリスク選好度によって決まる。不動産市場のリスクを取りたくない人は賃貸を選ぶ。保守的な人は借金をせず、現金で一括購入するだろう。逆に大きなリスクを取りたい人は、住宅ローンでレバレッジをかけてマイホームを購入する。(p.87)優劣はないとなると、あとはリスク取るか取らないか。
日本人はリスクを好まないと言われるが、これも妄説である。日本人は戦後ずっと、個人も企業も不動産市場にハイリスクな投資を行ってきた。そしてバブル崩壊後の今も、多くの人がマイホームという名の危険な投資に好んで金を投じているのだ。(p.87)これは、マイホームならではの特徴も関係ありげ。
マイホームには、所有する者に喜びをもたらすという、他の資産にはない大きな特徴がある。(p.92)
日本でカジノの合法化ができないのは、公営ギャンブルの既得権を守るためである、という話(p.212)。ラスベガスのカジノのテラ銭は 1〜5%。
日本の公営ギャンブルは25%、宝くじは50%。合法化して民間参入されると、公営ギャンブルは成り立たず、関連団体も存続できず、天下り先もなくなる、と。
福祉と極右政党の話。
米国に極右政党が存在しないのは、福祉が貧困だからだ。ヨーロッパで組織的・暴力的な移民排斥運動が広がるのは、社会福祉が充実しているからである。(p.228)
先進国の社会的弱者は、世界基準ではとてつもなく裕福な人たちだ。彼らが極右政党を組織して移民排斥を求めるのは、福祉のパイが限られていることを知っているからだ。(p.229)で、「福祉国家」は「差別国家」だ、と。
福祉社会の行きすぎは確かにヤバイ気はするが。
真偽はともかく、北欧での非白人への激しい差別のウワサをネットで見かけたりしたなあ。
最後に。すべてを投げ出して、オーストラリアへ旅に出て、戻ってきて、さらに荒んだ生活になった友人について。
人生は、日々の積み重ねの延長線上にある。だから、簡単には変わらない。そんなことは、彼も知っていたはずだ。なんとなく悲しくなったので引用。
最近、彼がアパートを引き払って、予定のない長い旅に出たことを聞いた。今頃はインドを放浪しているはずだという。
際限のない自由を手に入れた彼は、人生を変える体験をまだ探し続けている。
旅はいつか終わり、戻るべき家はない。 (p.25)
旅はいつか終わる。