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米原万里 / 不実な美女か貞淑な醜女か / 新潮文庫


ロシア語通訳である著者による通訳についてのエッセイ。
異文化コミュニケーションの楽しくてためになる話がいっぱい。
ちなみに本のタイトルは、「美しい文だけど内容は不正確な訳 or ぎこちない文だけど内容は正確な訳」といった意味です。

通訳というのは、異なる科目の試験を一夜漬けで次々とこなしていくようなものだそうな。大変そうだけど、いろんな分野のことを知ることができて楽しそう。浅く、広く、ですね。
一夜漬けで試験に挑む日がひとつ終われば、また次が控えている、しかもその科目が毎回違う、そんな比喩が通訳者の人生にはぴったりだという気がする。(p.20)
これこそがこの職業の魅力であり、また難しさでもあるのだが、一言で表現するならば多様性。それも、いろいろな面で多様であるといえる。(p.24)

通訳と文章要約力の話に、なるほどー。
すごいなあ通訳って。文章要約をリアルタイムでやってるわけですよ。
このように通訳に際して、文脈は、言葉を聞き取り、理解する際に参考にするというパッシブな、つまり受け身の利用法ばかりでなく、文脈を頼りに聞き手が了解できるところは、思い切って省略するという、より能動的な取り込み方ができるのである。
(p.246)
要約に関連して、シャドーイングの功罪について述べています。
発音やイントネーションを学ぶには良いが、通訳の最大の武器である、情報の核を見つける技術が身につかないのでは、と。
追うことばかりでは要約力が身につかないということですね。

通訳の失敗話 (本人自身の話や聞いてきた話) がおもしろ!
  • イタリアのデザインショーでモデルのような美人の通訳嬢「ここにインケイをつけます。インケイ (陰茎?) をつけます。」陰影の読み違い疑惑。
  • 「他人のふんどしで相撲を取る」を「他人のパンツでレスリングをする」と訳した。権威の話なのに不潔感しか残らないと反省。

最後の方で著者はコラムニストの中野翠氏の言葉を引用をしています。
中途半端な知識人ほど、受けを狙ってシモネタと駄洒落に走る
うむむ。