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メリル・R. チャップマン / アホでマヌケな米国(アメリカ)ハイテク企業-エクセレント・カンパニーを崩壊に導いた、トホホなマーケティング20年史


アメリカのIT会社の衰亡の事例集、といったところかな。
ものすごく面白いです。

20年前の米国のIT業界トップ10で今でもトップ10に生き残っているのはマイクロソフトのみ。
その理由は?
実際のところ、ハイテク企業を調べてみると、勝ち組と負け組みをつねに分けているものは一つしか見当たらない。それは「愚かさ」だ。成功する会社は、失敗する会社に比べて、愚かなことをしない。(p.15)
致命的なミスがなければ生き残れるわけで。

その致命的なミスってのは外から見ると非常に分かりやすいものだけど、会社の中からだとどうも分からないみたい。
ミスの例として、本書では、「同じような製品のラインナップが複数ある」や「売れている製品の主要な機能を取り除いてお買い得製品を作る(引き算のマーケティング)」などが取り上げられています。
もちろんそれぞれ実際の会社とその製品を事例として詳しく解説。

取り上げられているストーリーは、IBM、マイクロプロ、OS/2、ボーランド、モトローラ、ノベル、ネットスケープなどなど。
知ってる話もあれば知らなかった話もあり。
どれも「あちゃー」と叫びたくなるものばかり。

タイトルから受ける印象と異なり、かなりしっかりした内容です。
(邦題のひどさについてはいろいろ言いたいけど自重。
流行に乗らずにまともな邦題にしておけば、時代を超えた名著になったかもしれないのにこれじゃあ人にオススメしにくいよなあ。)
Joel on Software[2006-02-11-3]のジョエル・スポルスキ氏が前説を書いてたりするし、権威的に(!?)ちゃんとした本です。

巻末のジョエルインタビューも良いね。
ソフトウェア企業が犯す最大の罪は何?という質問に対してのジョエルの答えが的確だ。
SMS ソフトウェア企業が犯す最大の罪は何だと思う?

ジョエル・スポルスキ(JS) 製品を完全に書き直すことだな。
既存のコードは複雑で巨大でバグだらけだから、ゼロからやり直そう、ってやつよ。

SMS ほう、それのどこがいけないんだい?

JS それが真実だってことはまずないからさ。
コードは錆び付くようなものじゃない。
新しいコードは古いコードより優れているっていう考え方は、まったくバカげている。
古いコードは実際に使用され、テストも済んでいる。
そしてすでに多くのバグが見つかり、修正されている。
どこも悪いところはないのさ。

SMS なるほど。
じゃあどうしてプログラマたちは、よく管理職のオフィスに押しかけて、既存のコードベースは使い物にならないから書き直さなきゃだめだって主張するんだろう?

JS それはきっと、コードってのは書くよりも読むほうが難しいからだろうな。
プログラマは、不細工な関数があるとグチをこぼす。[...]
この関数を捨てて、ゼロから書き直すってことは、前述のような知識をすべて捨てることに等しい。
せっかく加えたバグフィックスと、数年分のプログラミング作業が台無しになるんだよ。

本書にはこういう「ゼロから書き直し」で失敗した企業の例もいくつか出てきます。
既存のコードを読んでて、「うぎゃぎゃー」っとなって、全部一から書き直したくなることは多々ありますが、「それが他のタスクと比べてどれだけ重要なのか」を見極めて行動したいですね。

「コードってのは書くよりも読むほうが難しいからだろうな」はまさに名言だなあ。身につまされます。