●"最適者"はどこから来るのか?献本いただきました。ありがとうございます。
新しい種が生まれた時、なぜそれが古い種にとってかわるのか?
ダーウィンは、それを「自然淘汰」という考えで説明した。
環境の変化に適応できない古い種は淘汰されていく、それが「進化」なのだと。
しかし、では、どうして都合よく、新しい環境に適応した新しい種は生まれるのだろうか? 自然淘汰は、最適者を保存改良することはできる。だが、その最適者はどこからやってくるのか? ダーウィンがどうしても解けなかったのが、その「最適者の到来」の謎だった。
今、5000次元の組み合わせを解くことのできる数学とコンピューターが、「最適者の到来」の道筋を解きあかしつつある。
たとえば、ある生命が、グルコース、クエン酸、エタノールなどの物質を「代謝」してとりこむことができるか否かを各々の物質について0、1で表せば、その組み合わせは2の5000乗に達する。これを5000次元の「図書館」にみたてる。
もしもたとえばグルコースを代謝する能力が、この膨大な組み合わせのうち1つしかなければ、進化は38億年程度ではとてもそこにたどり着かないだろう。
しかし、代謝能力の最新の研究成果にもとづいて、コンピューターでこの「図書館」を探索してゆくと、グルコースを代謝する能力は1つしかないどころではなかった。それは、組み合わせを変えながらも常にその能力を保ったまま、図書館の中に「ネットワーク」を形成していたのだ。
進化は、このネットワークを探索していけば想像以上に簡単に新機軸にたどり着く。
「最適者」の発見に、奇跡は必要なかったのだ。
進化論最大の謎に答える新理論をわかりやすく提示した、力作ポピュラー・サイエンス。
「著者ワグナーはけっして反進化論者ではないが、私を含めて、多くの正統派進化論者が見落としていた進化論の弱点ないし問題点ともいうべきところが明らかになっているだけでなく、その答えを豊富なデータと鮮やかな論証によって提示しているのだ。これは、衝撃的と言ってもいい本である」(訳者解説より)