元国連職員などとして数カ国で働いてきた谷本さん(現ロンドン在住)が、日本で流行るノマド論のおかしさを一刀両断。組織に寄りかからず自立した働き方が必要となる日本の未来を担う人たちのために、本当に有益なアドバイスを贈る。
「付加価値の高い」技能がない人がノマドになっても、結局は使い捨ての下請けや個人事業主として雇われるだけで、実態は派遣社員と変わりありません。給料も安く、保証もありません。ただ、労働の激烈な自由化を進めているだけです。
ノマドブームの行き着く先は、かつてのフリーターブームや起業ブームと同じような悲劇になるのではないか、と危惧しています。
ノマドに必要なのは、専門知識やスキルだけではありません。「ひとりでまわすラーメンの屋台」状態ですから、営業、事務処理、対人能力も必要とされます。全部自分でやらざるを得ないので、普通の会社員よりはるかに高い能力が必要なのです。まったくもって。高い専門性と持続のための能力。厳しいね。
すべてをこなせるオールマイティーな「スーパーワーカー」だけが、ノマドになって生き残っていけます。
こういう職場では、突然専門以外の仕事を振られても「これは、私の最大の力を発揮できないからお断りする。しかも、会社側と私の交わした雇用契約に違反する。専門外の仕事を割り当てれば、私が失敗することは目に見えている。つまり、これは私に失敗をさせて、心理的にいじめ、私を退職に追い込むという『演繹的な解雇』(constructive dismissal)ではないか」というようなことを言う人が珍しくありません。日本では当面そういうことはなさそうだなあ。ううむ。
経験の浅い若者は雇われにくくなります。これは英米で実際に起こっていることです。経験を「買う」ために、若者は学生のうちからインターンをやります。インターンの経験が仕事の有無を左右するのです。まだ経験が浅い人の教育訓練やそれにかかる時間を、会社が負担する代わりに本人が負担するというわけです。
こうした理由から、親にお金がない学生にはインターンを経験することが難しいのです。貧しい家庭の子はインターンシップの経験を「買えない」ために就職できない、というわけです。金銭的に余裕がなければ長期間無給のインターンをやるのは無理なので、就職はしなければならない。イギリスではそんなわけで高学歴で無職の若い人が増えている。日本もそうなっていくのかなあ。
シェアハウスは便利かもしれませんが、実際はもっと安いアパートがあったりします。これ、ほんとにそう思う。私の住んでいる渋谷区にもシェアハウスがいろいろあるんだけど、その金額払うんだったら私が前住んでいた恵比寿の…とモヤモヤ。シェアハウスの利点と金額を冷静に比べるとどうなんでしょうね。