紀元前4000年、最初の都市が西アジアに出現する。多くの人々が“ともに生きる”場所である都市を生み出した原動力は、分業だ。麦や羊などの原始貨幣を使って給料を支払うという分業システムが専門の職人を生みだし、技術革新を後押しするようになった。その革新によって生産が増え、都市はさらに繁栄していく。しかし、分業システムは必然的に格差を生み出す。長く平等至上主義を守ってきた人間社会は繁栄と引き替えに格差を受け入れたのだ。
ただその一方、格差を解消する模索もはじめていたことがメソポタミア文明の研究から浮かび上がっている。しかし、その模索はギリシャ時代に頓挫する。本格的な貨幣経済のはじまりが人々の欲望を煽り、格差を拡大させていったのだ。その代償は大きかった。欲望の果てに資源を使い尽くしたギリシャ文明は衰退の一途をたどっていくことになったのだ。
ギリシャ文明の運命は、現在、温暖化などの環境問題に直面している私たち自身の「祖型」ともいえる。貨幣システムの誕生と変遷のなか、都市を舞台にした人間の心の変遷をたどり、私たちのめざすべき未来を探る。