「Web2.0」とは、「Webでの第二世代のサービス」というほどの意味で、それによって「ネットのユーザーがたんなるサービスの享受者としてではなく、みずから表現者として参加できるようになる」などといわれるが、そこには新しい技術のことは何も書かれていない。つまり、いまのIT技術をどのように使うべきかという「使い方の議論」にすぎないのである。次のコア技術の必要性についての文脈で。
そのような議論を見て興奮するのは馬鹿馬鹿しいことであり、正しくは「これでコンピュータIT時代の終わりが始まったのだ」と読むべきなのである。
(p.53)
シリコンバレーの成功を見て、膨大なファンドが流れ込んできたために、リスクを取って新産業を育てようという志が希薄になり、ただリターンだけに関心をもつファンドマネージャーや経営コンサルタントが、資金運用の主体になっていった。
(p.61)
リスクを冒したくないキャピタリストにとっては、大きな未来を生み出すかもしれないが高リスクで長期間にわたり「未来のコア技術」の開発への投資よりも、Web 2.0 のように、既存の技術を組み合わせただけのものへの投資のほうが、はるかに望ましい。アメリカで新しいコア技術を開発することが困難っぽい理由の一つとして。
その結果、Web 2.0 のような新味のないものへの投資ばかりが集まり、ポストコンピュータを担うコア技術のアイディアをもっている人間がどれほど世界中から集まってきたとしても、もはやアメリカでは彼らに投資する人が急速に減少して、とても期待できないような状況になってしまったのである。
(pp.62-63)
かつて自動車メーカーのGM(ゼネラルモーターズ)が、公共交通機関が発展することは自動車の売上高に影響すると考え、大きな市電会社を買収しては、買収後に市電を廃止する動きを見せたことがあった。それと同じようなことを、アメリカのコンピュータ会社は行おうとしている。マイクロソフトの話も出て来ます。
(p.67)