なくなった辰野隆博士が、かつて講義の途中で、つぎのような雑談をしたことがある。相手には難しいネタも混ぜて話すことによって信頼感を持たせる作戦。
自分がどこかの夏期講習会に招かれたとき、主催者からつぎのように言われたことがある。
「先生、むずかしい話では困りますが、やさしすぎても困ります。だいたい、九十パーセントはわかりやすい話にして、あと十パーセントぐらいをむずかしい話にして下さい。みんなわかる話だと、甘く見られますから」。
博士は、五パーセントぐらいは、自分にもわからぬようなことを話した。
そして、さすがに学者はえらいもんだとの評を得た、というエピソードであった。
(p.133)
「……と思う」「……ではなかろうか」「……にちがいない」「……かもしれない」等々、文末に変化を多くつける人の文は、だいたいにおいて読む値打ちがあると思ってよいようだ。リズム重要。
(p.56)