これ以降、ローマ人は控訴権を失うのである。
これもまた、全員に与えたことでかえって全員が失った、一例なのであった。
私とはちがう考え方をする人がいるのも当然で、その人たちは言うだろう。
一部の人のみが享受していた権利は、それを全員が享受できないとなれば全員が享受しない方が正しいのだ、と。
ローマ市民権とは既得権ではなく、得ようと思う人には門戸は開かれていた取得権であることに特色があったのだが、それを重視するのはリベラリズムの立場である。
そのリベラルな考え方に立っていた「取得権」を「既得権」に変えたのが、カラカラの「アントニヌス勅令」だった。
ローマは、ローマである理由を少しずつ、自らの手で失いつつあったのである。(p.138)