[...]本は面白ければいいのだ、タメになればいいのだ、とおっしゃるか
もしれませんが、それは甘えです。ロークラスの本を面白いと思うことを、
恥ずかしいと感じる完成こそが、スタイルのある成熟した大人への第一歩
なのです。 (p.23)
いや、別に天国がどうした、というような本を読んでもいいし、好きだと
いっても構わないわけです。ただ、それが、他者から見てどういう意味に
とられるか、ということについて意識したうえで、語るならばいいのです。
でも、このあたり大変無頓着ですよね、皆さんは。一足の靴、一つのカバ
ンを持つことが、どういう意味を持つのかという点については、非常に意
識的であり、時に戦略的ですらある人が、本についてはまったく意識がな
い。(p.226)