ビートたけしという人はネタ帳を肌身離さずもち、寝るときも枕元におい
て、森羅万象、気づいたこと、ひらめいたこと、考えたことをすかさず
メモするのが習慣になっていると聞く。これを芸人の熱心さというレベル
の話で受け取ってはいけないと思う。職業をもつすべての人にとって、
プロとアマ、一流と二流の人間を分ける秘訣がここにあるからだ。(p.3)
単に読んで頭に入れるのと、自分の手で書きつけてみるのとでは情報の
内部への浸透度合いが違うものだ。メモの効用は予想以上に大きい。その
無機的に見える断片の羅列から有機的なアイデアや考えが生まれてくる。
メモの習慣とその継続は想像力と向上心のソースとなるのである。(p.159)
人はよく大事なことだからメモしようとするが、大事なことはメモしなく(「ひとつ上のアイディア。」[2005-12-03-2]の多田琢さんの言葉にも関連)
てもたいてい覚えているものである。ほんとうにメモが必要なのは
「ちょっとしたこと」なのである。そのとき大事だとは思わなかったがあ
とで大事だと思えてくること、それが真にメモすべき事柄であり、
したがって、なんでもメモすることが大切になってくるのだ。(p.160)