グーグルやフェイスブックが開発にしのぎを削る人工知能。日本トップクラスの研究者の一人である著者が、最新技術「ディープラーニング」とこれまでの知的格闘を解きほぐし、知能とは何か、人間とは何かを問い直す。
われわれ人類が預かり知らぬところで、少人数のマッドサイエンティストによって、人類を征服するような人工知能が生み出されるという話は、「自己再生産」という仕組みの難しさを理解していない人の意見である、現実味がない。あるいは、「遺伝子工学と結びつくことで生命化するのだ」と言ったとしても、どのように遺伝子工学が人工知能と組み合わされると自己再生産するものができるのかという、ごくわずかでも可能性のある方法は提示されていない。人工知能が人間を征服する心配はないという著者の意見。
これまで人工知能研究が冬の時代を迎えるたびに、研究者たちは苦渋を舐めてきた。当時を知る人たちからすると、人工知能の未来について、悲観的にならざるを得ないのも理解できる。一方で、世間の期待感が高すぎるのも問題である。学会全体として社会に対する適切な「期待値コントロール」が必要だろう。後者の方、「期待値コントロール」は特に重要ですね。できないことをできると思わせないようにしたいですよ。過度な期待を煽らないように研究成果を出していってもらいたいところ。