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Kindle ストアにある米原万里の未読のエッセイを少しずつ読んでいます。今回読んだのはこれ。

米原万里 / ガセネッタ&シモネッタ [Kindle版]

もし、あなたが同時通訳者だとして、現場で突然「他人のフンドシで相撲を取る」という表現が出てきたら、どう訳します?時間はないし、誤訳も困る。同時通訳は、次にどんな言葉が出てくるかわからない、スリル満点ストレス強烈な世界。そのストレス解消のため、国際化社会に欠かせない重職でありながら、同時通訳者の仕事には爆笑がつきもの。国際会議の舞台裏から、ロシアの小話や業界笑い話、柳瀬尚紀・永井愛氏との充実のコトバ対談まで、抱腹絶倒のエッセイ集!

米原さんのエッセイを読むといつも言葉について考えさせられます。エッセイだけでなく対談もあって、いつもと違った雰囲気を味わえます。対談では本書で書いてある内容も出てくるのですが、復習にもなるので良い感じ!

以下、読書メモ。

通訳者に下ネタ好きが多いのは、理解できる。これほどいかなる言語、文化をも楽々と飛び越えて万人に通じる概念はないからだ。いまはやりのグローバリズムに最も合致するのが下ネタ。
 しかし、駄洒落はその逆。狭く排他的で、言語の壁を乗り越えられない偏狭なナショナリズムそのもの。
これは「なるほど!」と思いました。下ネタはグローバル、駄洒落はローカル。世界を目指すならシモネタ!

固形排泄物をさすあの言葉が、異なる文明圏でまったく同じ比喩的な用いられ方をしている実態。「く○野郎」みたいな。人類に共通した意識なんだろなあ。

ワイシャツがいまも必要以上に(膝に届くほどに)長くて側面にスリットが入っているのは、その名残だ。ワイシャツの前身頃の下端と後ろ身頃の下端で股を覆う。
これも「なるほど!」な話。あちらではワイシャツでは下着を履かないという風習だったそう。ノーパン!

「これから映画をごらんにいれます」  ロシア側来賓は一本目が終わったところで、皆ゾロゾロと立ち上がり会場から出ていってしまった。わたしが、「映画」を単数形にして訳していたせいだ。主催者が大慌てで引きとめたものの、すっかり通訳としての信用を失墜してしまった。
こういう話をきくと、通訳なんて怖くてやれないよなあ。心配で眠れない…。

日本でも最大手のある通訳派遣会社が、通訳に対する顧客のクレームをまとめた。ブッチギリの苦情ナンバー・ワンは、通訳技術とか接客態度などではなく、なんと服装だった。「アクセサリー過多」「宴席に汗くさいポロシャツで現れた」「派手で主賓より目立った」etc……。
裏方ですからねえ…。

少数民族の言葉を勉強するにはロシア語をやった方がよいことも。ソビエト時代に国をあげていろんな言葉をやっていて資料(教科書など)たくさん。効率重視でないことの利点。そういえば、中国系の人が日本語を勉強して世界文学などにアクセスするという話を思い出しました。

「ダルタニヤンとミレディーの濡れ場」ってのがあるらしいけど、知らなかったカットされてたのかなあ。

目次:
シェフからのご挨拶(ガセネッタ・ダジャーレとシモネッタ・ドッジ)
食前酒(三つのお願い)
前菜(出会い頭の挨拶はご用心
シリーズ化という病 ほか)
第一の皿(開け、胡麻
京のぶぶづけとイタリア男 ほか)
白ワイン(翻訳と通訳と辞書)
第二の皿(田作の歯ぎしり:「地理的概念」にご用心 ほか)
ロシア風サラダ(空恐ロシヤ
全ロシア愛猫家協会 ほか)
赤ワイン(変わる日本語、変わるか日本)
チーズ(禁句なんて怖くないけれど
取り越し苦労 ほか)
デザート(目前のフィルム・ライブラリー
ダルタニヤンとミレディーの濡れ場のゾクゾク ほか)
コーヒー(ピオニ ル キャンプの収穫
懐かしい恩師に褒められてもらったような ほか)
食後酒(楽天家になろう)

これまでに読んだ米原万里本