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献本頂きました。ありがとうございます。
(ref. [2011-10-28-2])

みたいもん[mi]というブログをやっているいしたにまさき氏(@masakiishitani)と「工場萌え」でおなじみの大山顕氏(@sohsai)による気負わず楽しく撮ることを目的とした一冊。

いしたにまさき, 大山顕 / 楽しいみんなの写真 -とにかく撮る、flickrで見る。ソーシャルメディア時代の写真の撮り方・楽しみ方

誰でも簡単に携帯やデジカメで写真を撮って公開できるようになり、デジタル化された写真が大量にソーシャルメディアに流れている今、写真の撮り方や見方、楽しみ方、そしてその役割にも変化が起きています。

本書は、「みんな」をキーワードに、ブログ「みたいもん!」のいしたにまさき氏が「写真を見る」という側面から写真共有サイトflickrを使い、写真とソーシャルメディアの関係性を探り、「工場萌え」の大山顕氏が「写真を撮る」という側面から、自身が開催している写真ワークショップの実体験を振り返り、写真と人とのつながりを掘り下げていきます。

「ちょっといいデジカメを買ったけど、なにをどう撮ったらいいのかわからない」「そもそも“良い写真”ってなんだろう?」「flickrは登録したけど使っていない・・」という人にぜひ読んでもらいたい1冊です。

アナログ写真とデジタル写真の違いはなにか。何枚撮ってもタダというあたりまえのことも大きいな違いだけど、ネットというデータ流通プラットフォームの存在、Exifという撮影情報の標準規格の登場、といったことがもっと大きい。こういうデジタルならではの恩恵を受けたFlickrのようなインフラが登場し、一人(または身内)で楽しむだけでなく、「みんな」と楽しめるようになった。つまり、日常的に写真を撮って楽しめるようになった。写真はプロだけのものではないし、趣味の人だけのものでもなくなった。うまい写真よりも楽しい写真、デジタルの時代ではそんな人だけ増えてきた。

そんな感じの時代における、気負わずに楽しむ「みんなの写真」についての本です。「わざわざ感」のなくなった写真との付き合い方についていろいろとヒントを与えてくれます。

大山さんによるワークショップ開催のレポートの章では、「手段と目的」の話が面白かったです。ワークショップでは写真による自分探しを禁止に。「撮りたいもの」とか探さない。「自分の感性」も横に置いておく。「あなただけの一枚」と言われてもねえ。
こういう「自分探し」を繰り返していると、いつのまにか目的が「良い写真を撮りたい」ではなくて「良い写真を撮れる自分になりたい」にすり替わったりします。できあがるのは「良い写真」ではんかうて「良い写真を撮った自分の記録ではないでしょうか。この状態から抜け出すのは大変です。そこで、このワークショップでは「自分のことを忘れて撮る」ということをやってもらうわけです。
(p.73)

いしたにさんによる「アートフィルターは照れ隠し」説も納得。巻末の編集後期を兼ねた座談会での発言。
アートフィルターをかけた瞬間にナントカ風の写真によるなる。ナントカ風に見せたいってこと込みでアナウンスしていることにはなって。まあ、照れ隠しですよね。その言い訳をつけてあげることで撮りやすくなるし、みんなに見せやすくなるし、参加しやすくなる。
(p.141)

最後にいしたにさんのことば。
結局デジタル写真とアナログ(銀塩)写真の差は流通のしやすさ。もうそこに尽きる。
(p.142)
ブログなんかもそうですが、インターネットの時代にはどんなささいなものでも簡単に流通させることができるので、まあほんとここが本質ですよね。
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